コラム

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業務の生産性向上のためにすべきこと-必ずある業務改善箇所の見つけ方その3:当社は業務を組織的に行えているか?チェックリストで点検してみよう

会議の様子

「中小企業は組織的に取り組むことがうまくない」のが普通。

企業や団体にお勤めの皆様にお尋ねします。皆様は、「うちの会社(あるいは、団体)、うまく組織を運営できているよなぁ」って感じていますか?
「組織運営?そんなこと、気にしたこともない」という方もちょっと考えてみて下さい。
さて、「No」と感じた方、それほど気にしないでください。あらためてそんなことを尋ねると、大半の方は「No」と答えます。組織運営がうまくいっていないのは、あなたが所属している企業や団体に限ったことではないのです。
そして、組織運営がうまくいっていないとしたら、「業務に組織的取り組む」こともうまくいっていないと考えるのが至極当然です。「組織的に取り組む」とは、「組織として定められた決まり事として、決められた役割や手順に従って取り組む」ということです。

一方、「Yes」と感じた方。その全ての方というわけではありませんが、そのような方は、大抵、大きな組織に所属しています。組織としての色々な決まり事が多く、少し息苦しさも感じているでしょうが、大半の業務は、組織的に取り組むことが当たり前になっているはずです。ただし、時折、「決められた役割や手順に従って取り組んでいることにしている」というケースに遭遇します。コンプライアンスと効率の板挟みになり、つい、決められた通りにやったことにしてしまう。そのことが世間に発覚して、謝罪に追い込まれる、などという光景をご覧になったこともあるでしょう。

少々脱線しましたが、結局のところ、一部の大きな組織以外、裏を返せば多くの中小企業では、組織的に取り組むことがうまくないのが普通なのです。
それは、どうしてなのでしょうか?
また、これがなにか問題あるのでしょうか?

何故、組織的に取り組むことがうまくないのか、そのことに気付かないのか。

中小企業で働く方には、忙しい時とか、主担当者が不在時とかいった場合に、普段は担当していない業務を担当することを求められることが、しばしばあります。組織として意図してそうなったのか、現実に合わせて対応しているうちにそうなったかは別として、一人の社員が、主担当業務だけでなく複数の業務を担当することが普通に行われています。

このような背景もあり、多くの中小企業では、業務を細分化して厳密にその内容や手順を決めたり、業務の分担を細かく決めたりするということが現実的とは感じられないのです。仮にそのようなことをきちんと決めたところで、大抵の場合、それ程時間をおかずにその通りにやらなくなってしまい、決めたことが行き詰るか形骸化してしまいます。
結果、業務の仕方や分担などが曖昧になって、担当者の裁量によって業務が処理されているということが常態化していきます。この方が、何事にも柔軟に対応できるし効率的にも思えます。

こうなると、個人が集まって組織を形成してはいるが、組織的に業務に取り組んでいるわけではなく、担当者が個人的に業務を行っていって、たまたまそれがうまく積み重なったら組織としての業務が完了しているという状態となっているのです。でも、深刻な問題が発生するまで、そのことを問題と思わない。これが普通です。だから、実は組織的に取り組んではいないということに気づかないのです。

組織的に取り組まないとどんな問題が起こるのか。

しかし、それでは業務が組織ではなく、特定の担当者に属人化してしまいます。その人が不在でも、それがちょっと外出している程度の一時的不在なら、あるいは数日程度の不在なら、なんとかなるかも知れません。恐らく、実際に何とかしているのでしょう。ですが、それが、かえって問題意識を希薄にしているのです。

もし、病気や事故で長期不在となったら、あるいは、何らかの事情で急きょ退職することになったらどうなるのでしょう。業務が停滞するだけではなく、顧客や取引先に迷惑をかけてしまいかねません。組織の信用にも傷がつくかもしれません。
どんなに優れた担当者でも、いつもいる、そして、いつまでもいる、とは限りません。当たり前のことです。ですが、このようなリスクへの対応は、後回しに、あるいは忘れてしまいがち。いざ、このようなリスクが顕在化したときに後悔することになるのです。組織としては脆弱です。

また、優秀な人ほど、自分にメリットがある場合以外、組織的な取り組みに消極的なことがあるので、注意が必要です。
組織的なICT活用などの取り組みによって、制約が加わると、今までのように自由にできない、あるいは、自分だけにしかできないようすることで自分の存在価値を維持したいのに、それができなくなる、といったところが主な理由です。

これらのような状況を容認したり放置したりすることが、業務の効率化や品質向上を妨げるのです。

これで分かる!業務の効率化や品質向上を妨げる、業務処理の体制や仕組みでのBADチョイス

さて、あなたの組織が、組織的に業務に取り組んでいるかどうか、あなたは把握していますか?
あるいは、組織的に業務に取り組んでいると自信をもって言い切れますか?
「大丈夫。わたしの組織は組織的に業務に取り組んでいる」と思ったとしても、以下のチェックリストで念のため確認してみてください。もしかすると「組織的に取り組んでいると思い込んでいた」だけかもしれませんから…
以下のチェックリストに当てはめてみて、もし、答えが一つでも“No”なら、組織的に業務に取り組んではいないBADチョイスにはまっている可能性大です。そうならば、生産性低下という悪影響が間違いなくあるはずです。

チェック1:担当者が休んでも、会社としてやるべき業務が漏れなく行われる体制になっていますか?

組織としては、誰かが欠勤したり休暇をとったりしても、業務に支障が生じないようにする必要があります。
誰かが休んだ時、組織として取り組む必要のある業務の実施が漏れるようなら、役割分担の面で、組織で業務に取り組む体制になっていないBADチョイスの状態です。

チェック2:業務の仕方は、組織として決まっていて可視化されていますか?

前述の例で、漏れはしないけど、担当者に確認しないと分からない点があるという状況も、避けなければなりません。担当者に必ず連絡が取れるとは限らないのです。
誰かが休んだ時、その人の業務をすんなり代行できないのなら、組織的に業務に取り組んでいるのではなく、業務が属人化してしまっているBADチョイスの状態です。

チェック3:ある担当者の業務を別の担当者がチェックする体制となっていますか?

チェックというと、ベテランや上司がするものと思いがちですが、教育目的で若手社員にチェックさせたり、担当者の急な休みに備えて同僚にチェックさせたりということも効果的です。
ただ、そのためには、組織としてのルールを確立する必要があります。別の誰かがチェックする体制になっていない、あるいは、チェックできるのはベテランや上司だけだとしたら、役割分担の面で、組織で業務に取り組む体制になっていないBADチョイスの状態です。

如何でしょう。皆様の組織が、ここに挙げたBADチョイスに一つでも該当するようなら改善を検討して下さい。

もちろん、業務担当者の工夫そのものは、問題ではありません。むしろ、多いに歓迎すべきことです。組織としてのルールが確立されていないことが問題なのです。
個人のなかに留まっている工夫は、属人的であるが故に、好ましくありません。しかし、それが、組織のルールにまで高まれば、それは業務版の「カイゼン」であり、組織にとって好ましいことになるのです。
カイゼンにより、業務の品質と効率を高め、ICTを活用してさらに磨きをかければいいのです。

以上、組織的に業務に取り組まないと生産性が低下するということを中心にお話ししました。ここに示したことについて、「ひょっとしたらうちの組織も…」と感じる方は、ぜひ、現状を確認してみてください。そして、確認の結果、問題が発見されたなら、改善に取り組んでください。

では、どう改善すればいいのか。まず、業務プロセスを可視化したうえで、標準化することをお勧めします。次いで、標準化したプロセスにのっとって業務を行うことを徹底しつつ、適宜、問題点や改良点を、出し合ったり話し合ったりしながら、業務プロセスを見直していくといいでしょう。
標準化しても、徹底しなければ、組織の中には定着しないし、徹底しても見直さなければ、効率も品質もいずれは悪化します。標準化も、その徹底も、そして見直しも、いずれも簡単ではありませんが、改善のためには、結果的には最も近道です。
そして、できれば、RPA(Robotic Process Automation)、AI、IoTなどを活用して自動化にもチャレンジしてはいかがでしょう。

本コラムを参考に、組織における業務への取り組み方について、生産性低下をもたらすにもかかわらず、見落としてしまいがちな問題を発見してみてください。発見できれば、みなさんが所属する組織の生産性向上のきっかけになるかもしれません。本コラムを業務改善のヒントとして活用して頂ければ幸いです。

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