コラム

/ Column

クラウドで複数拠点の勤務シフトと勤怠を管理して、業務の効率・スピード・品質の向上と残業削減を同時に実現

クラウドで繋がる端末

施設・設備管理業 F社

当社は、商業施設や付属設備などを常駐スタッフにより保全、管理、監視等を行うビジネスを展開している。顧客からはサービス内容や信頼性を評価されており、受注は比較的堅調に推移している。
ただ、厳しい競争のなか、利益は縮小傾向であり、コスト削減が求められている。一方で、残業時間が増加しつつあり、長時間残業が常態化する前に手を打つ必要があった。
そんな中、勤務シフト管理や勤怠実績管理の改善によって、コスト削減と残業抑制を目指して「勤怠業務刷新プロジェクト」がスタートすることとなった。

効率の悪い勤怠管理と増加傾向の残業

プロジェクトは、業務・IT活用改善コンサルティングからスタートした。現行業務や現行のIT活用の問題点を客観的に洗い出し、組織全体にとって最適な改善策を導き出すためである。その中で、特に問題となったのが以下の点である。

◆業務面

  1. 手作業またはEXCELで作成した勤務シフト表が、修正や共有の不便さから、最新化されず、効率的な人員配置に活かされることなく形骸化している。
  2. 各拠点で残業時間等を補足記入したタイムカードを、本社で毎月集計して勤怠実績を入力しているが、記載内容不備や入力間違えなど、非効率でミスが多発している。

◆IT活用面

  1. 現在は、勤務シフト、勤怠実績のどちらの業務でもITがあまり有効に活用されていない。活用されているITも、チェック機能が不足しているなど、貧弱である
  2. 勤怠実績が月次の集計のみを登録していて、各スタッフ勤務の明細はデータ化されていない。このままでは、今後の残業抑制等を目的としたIT活用が制限される。

自前のクラウドシステムとPCやタブレット端末を活用して業務プロセスを刷新

問題を解決して、コスト削減と残業抑制を実現すべく、自前の新システムを導入し、クラウドでの活用を開始した。
新システムでは、勤務シフトは各拠点に配布したPCやタブレット端末を利用して、最新状態を保つことが容易になった。また、業務特性に応じていくつか用意したテンプレートを活用することなどで勤務シフトの登録を容易にした。いずれも拠点には好評で、勤務シフトの正確性は格段に向上した。
勤怠実績は、正確になった勤務シフトとの差異入力だけで済むようにしたおかげで、現場で登録がほぼ完結し、効率が大幅に向上し、チェック機能の充実によりミスも大幅に減少した。また、各スタッフの勤務の明細もデータ化された。

クラウドシステムの導入効果

導入したクラウドシステムとPCやタブレットの活用により、勤務シフト管理と勤怠実績管理に関連した業務の効率・スピード・品質がいずれも大幅に向上し、コスト削減に大きく貢献した。また、常に最新の勤務シフトが把握できること、勤務の予実差異がすぐに把握できることなどから、残業の適正化も実現でき、残業の削減にも成功した。

具体的には、業務の効率と品質向上により、本社担当部門で、毎月0.5名分以上に相当する業務量を削減できた。また、ピーク時、現状に比べ2名少ない要員でも業務をスムーズにこなせるようなった効果も大きかった。従来は、部門の業務が特定時期に集中し、平常時は少々緩みがちといったような状況であった。それが、新システムの導入により、部門の業務が月を通して平準化可能となった。その結果、業務量削減分と併せて、結局、社員1名分の業務を削減できた。実際には、浮いた人員を、追加要員を必要としていた別の業務へシフトすることが可能となった。締めに要する日数も、従来の半分になった。
また、各拠点のスタッフの残業も、一人平均4時間程度削減できた。この分は、単純にコスト削減のみに活用するのではなく、スタッフの待遇改善の原資にもする予定である。

何故、自前システムにしたのか?

本IT活用事例では、勤怠クラウドサービス、勤怠パッケージソフトウェアも検討した結果、自前の勤怠システムを開発することにした。
対象人数を考慮するとコスト面で大きな違いがなかったということもあるが、理由は他にある。それは、雇用に対する企業の責任や社会の要請が、より厳格していくであろうという予測に基づいている。その予測のもとでは、既存のクラウドサービス等に備わる機能の範囲内でできることをやっていればいいという受け身な考え方では、自分たちが望むような対応ができない、あるいは後手に回るという思いが強かったからである。過去のIT活用における苦い経験も、そのような思いを強くする一因であった。
当社として自発的にかつ先手を打って、勤務シフトを工夫したり、新たなチェック機能や警告機能を迅速に追加したり、勤務明細を有する勤怠実績を当社独自の視点で分析したりすることを望んでいたのだ。そして、このような改善を継続して行うことが、スタッフの待遇改善に役立ち、それが、従業員満足度の向上につながって、結果、業績の向上につながると考えたのである。また、新規採用にもプラスになるだろうとの思いもあった。
ITの導入をゴールではなく、スタートと捉え、使いながらITをより洗練していこうと姿勢の表れである。
どんな場合でも自前のシステムがいいわけではないが、ITに自社の知見を集約したり、戦略的に活用しようとしたりするなら、自前システムも検討する価値はあるだろう。

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